猫のひきこもり

ワルツが一昼夜失踪していた。呼んでも来ないし、私が外出して戻ってきても、出迎えがない。隣の茶色のトラ猫は、山茶花の根元で朝からずっと鳴いていた。黒のグラデーションの猫も、気になる様子でうちの周りをウロウロしていた。なんて素敵な仲間たち。みんな心配してるのにどこにいってるんだ。倉庫にいるのに気づかずシャターを閉めて、閉じこめてしまうことがあるが、それもない。
夕飯の用意を始めた時、庭で二匹の猫のけたたましい鳴き声。ワルツが宿敵黒猫に追いかけ回されている。まわりはうす暗くなっていたが、思わず大声で怒鳴って、ワルツをうちに入れた。満身創痍で帰ってきた様子。気のせいか、蔵のなか独特のカビ臭いようなにおいがした。
黒猫には、体格は勝っていても、何度挑んでも勝てない。最近は逃げ回るばかり。野良は強い。悔しいことに、黒猫がうちの庭を縄張りにしている様子。
帰ってきたワルツは傷は無いようだが、そうとう落ち込んだようで、呼んでも返事しない。目も当てられないと言うより、合わせようとしない。一晩こたつでまるくなっていた。猫社会の権力闘争に負けた傷は深い。
今朝も茶トラが玄関先までやってきたが、外に出ようとせず、縁側で庭を眺める背中は悲哀・・・。こうなるとまったく借りてきた猫。元気がなく、一日中ひきこもっていた。
見てられなくて、夕食の後なでながら、傷をみていたら、尻尾がピン↑ワルツのご機嫌指数は尻尾でわかる。どうやら半分くらい。明日は満タンになるだろう。やれやれ、手のかかる。
いつか、黒猫にとってかわる日が来るだろう。